食物繊維の摂取量減少、運動量の減少、ストレス社会、社会の高齢化などに伴い、便秘を訴える方が増加しています。本邦での便秘薬は、浸透圧性下剤である酸化マグネシウムとセンナを中心とした刺激性下剤が長く使われて来ました。しかしながら、それだけでは便通を上手く調整できず、慢性便秘に日々困っている方も多いと思います。その解決策として、最近では作用機序が異なる多くの新規便秘薬が登場してきました。新規薬剤の登場は、より便秘の病態に沿った治療を可能にし、各々にあわせた個別化治療が最近のトレンドとなりつつあります。
<便秘薬>
1. 浸透圧性下剤;浸透圧勾配を利用し、腸内の水分量を増加させることで便を軟化させ、排便回数を増加させます。 塩類下剤、糖類下剤、ポリエチレングリコールがあります。
① 塩類下剤(酸化マグネシウム)
従来から広く使われており、安全性が高く、効果はマイルド。
② 糖類下剤(ラクツロースNF®)
高アンモニア血症による肝性脳症に使われていた薬。2018年、慢性便秘に保険適応になっています。
③ ポリエチレングリコール(モビコール®)
大腸内視鏡検査の検査用下剤に用いられていました。2018年から保険適応になり、小児から高齢者まで適応があります。
2. 上皮機能変容薬;慢性便秘症ガイドライン2017)にて、強い推奨度になっている比較的新しい便秘薬です。小腸上皮細胞に作用して、腸液分泌を促すことで排便を促進します。
① アミティーザ®
② リンゼス®
腸管の神経にも作用し、腹部不快感を改善させることから、便秘型の過敏性腸症候群に良い適応があります。
3. 胆汁酸トランスポーター阻害薬;肝臓で生成される胆汁酸の95%は小腸の最後で吸収されますが、残り5%が大腸で水分分泌と蠕動運動を引き起こします。この胆汁酸の作用を利用した下剤がエロビキシバット(グーフィス®)です。
4. 刺激性下剤;新規便秘薬の登場以前には、酸化マグネシウムと並んで本邦便秘薬の中心となってきた薬です。効果が出るまで、服用後数時間を要します。長期連用で耐性が出現するため、頓用で使用することが望ましいとされています。
① アントラキノン系(センノシド®、プルゼニド®)
大腸内で分解されて、腸管内の神経叢を直接刺激して大腸の蠕動運動を促します。眠前に内服して、翌朝効果がでるといった使い方でよく知られています。
② ジフェノール系(ラキソベロン®、ピコスルファート®)
液体の剤型もあり、用量調整が細かく可能です。
5.漢方薬;含有量の差はありますが、大黄が含まれていることが多く、多数知られています(大黄甘草湯、桃核承気湯、防風通聖散、腸胃承気湯、潤腸湯、麻子仁丸、桂枝加芍薬大黄湯、大建中湯など)。
6. 外用薬;
① 炭酸水素ナトリウム(新レシカルボン坐剤®)
炭酸ガスの発生で、直腸の粘膜を直接刺激し、排便を促します。効果の発現は10-30分後です。すみやかに排便したいときや、薬が飲めないときに用います。
① グリセリン浣腸液
禁忌事項(腸管内出血、腹腔内炎症のある患者さん、腸管に穿孔又はそのおそれのある患者さんなど)もあり、安易な使用は注意が必要です。
このように、今では多くの便秘薬が存在します。患者さんの排便状況をよく聴取し、必要な検査を行うことで、最適な便通を目指すことが可能になります。詳しくは、特定医療法人同心遠山病院「肛門外科」に、ご相談下さい。
<参考文献>
1)日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療 ガイドライン2017, 2017, 東京;南江堂
遠山病院 肛門外科
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