コラム

糖尿病の方は大腸がんに要注意

糖尿病の方は大腸がんに要注意

糖尿病の方は大腸がんに要注意

糖尿病(主に2型糖尿病)は、様々な発がんのリスクと関連していることがわかっています。今回、糖尿病と大腸がんの関係や糖尿病で大腸がんのリスクが高くなる理由、がん検診の重要性について紹介します。
国内外で発表された研究によると、糖尿病がある方は、がんになるリスクが20%ほど高いことが報告されています。日本人では特に大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが高いとされ、海外ではその他に、子宮内膜がん、乳がん、膀胱がんなどの関連も知られています。

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なぜ糖尿病だとがんのリスクが高くなるのでしょうか?

高血糖の状態自体が細胞の酸化ストレス#となってDNAを損傷し、細胞のがん化を引き起こすとされています。また、2型糖尿病がある方では、発がんのリスクとなる慢性的な炎症が存在することも知られています。さらに疫学的因子として、肥満や、運動不足、肉類の多い食生活なども、糖尿病とがんに共通したリスク因子として挙げられます。

#酸化ストレス;私たちは食べものから体を動かすエネルギーを作るため、呼吸によって酸素を取り込みます。その際、一部の酸素は「活性酸素」という物質に変わります。活性酸素は、他の物質に結びついたり働きかけたりする力が非常に強く、私たちの生命活動に欠かせないDNAやタンパク質といった物質を傷つけてしまいます。このように、体内の活性酸素が自分自身を酸化させようとする力を「酸化ストレス」といいます。

糖尿病と大腸がんについて

2005年に複数の研究結果を統合解析する研究(メタアナリシス)によって、大腸がんの罹患率および死亡率と糖尿病との関連性に関する研究が行われました( J Natl Cancer Inst. 2005)。約259万症例という大規模な解析の結果、男女や大腸がんの部位に関わらず、糖尿病は大腸がんのリスク増加に相関することが強く証明されました。これまでに、①インスリンがIGF-1 受容体などを介して細胞増殖を刺激する。②糖尿病による腸蠕動遅延が発がん物質の大腸粘膜への暴露時間の増加を来す。③高血糖、中性脂肪の増加が発がんに関与する胆汁酸を増加させる。と言ったことが基礎研究で明らかにされており、これらの点からもこのメタアナリシス結果が支持されています。  最近の報告では、2020年に「糖尿病は家族歴と同程度の大腸がんリスク因子であり、糖尿病患者においては大腸がん検診が重要である」という臨床研究結果が海外から報告されました(Am J Gastroenterol . 2020)。具体的には、50歳以前に糖尿病と診断されていると、50歳以前の大腸がんのリスクが1.9倍であること。大腸がんの家族歴があり、50歳以前に糖尿病と診断されていると、50歳以前の大腸がんのリスクが6.9倍もあり、50歳以降の大腸がんのリスクも1.9倍であることが示されていました。この結果から、糖尿病、特に2型糖尿病においては、50歳以前から大腸がんスクリーニングが重要であると理解できます。

糖尿病患者さんは大腸がん検診を 大腸がんは早期に発見すれば、完治することが可能ながんです。本邦では大腸がん検診の適応について40歳以上が一つの目安とされています。糖尿病がある方は積極的に受けられることをお勧めします。また、糖尿病が理由なく悪化した場合にも大腸がんなど、悪性疾患の鑑別が必要です。主治医から大腸内視鏡検査を勧められた時には、先送りにせず、積極的に検診を行いましょう。

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遠山病院 栄養部 (遠山病院 糖尿病ニュース2023.1から)

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