コラム

睡眠時無呼吸症候群SASを治しませんか?

睡眠時無呼吸症候群SASを治しませんか?

睡眠時無呼吸症候群SASを治しませんか?

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睡眠時無呼吸症候群(SASサス)をご存知でしょうか? 

SASは睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。医学的には、10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸が弱くなる「低呼吸」を指します。精密検査で、呼吸が止まったり、浅くなったりする回数(無呼吸低呼吸指数;AHI)が1時間に5回以上に増加すると、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。有病率は人口の約4%で、男性約9%、女性約3%と推定されています。潜在患者数は約500万人、重症と診断されて治療が必要な人だけでも、日本国内に300万人以上いると考えられており、国民病や現代病と呼ばれることもあります。また、糖尿病や高血圧、動脈硬化性疾患との合併率が高いことも知られています。

SASになるとどんな問題があるのでしょうか?

SASを放置すると、身体に必要な酸素量が不足し、さまざまな臓器に負担をかけて障害を引き起こす可能性があります。また、熟睡できないため日中に強い眠気に襲われて事故につながりやすく、集中力が低下するなど生活へのさまざまな支障の原因になります。SASの患者が交通事故を起こす頻度は、SASのない人の約7倍、一般ドライバーの約2.5倍といわれており、SASが重症になればなるほど事故率が高くなることも報告されています。

どういう症状からSASを疑うのですか?

睡眠時の病気ですから、自分ではなかなか思い当たらないことと思います。SASの症状として一般的には「起床時に頭痛がする」「体がだるい」「日中傾眠」「他人からいびきを指摘される」「睡眠中に呼吸が止まっていると家族等に指摘されたことがある」「しっかり眠っているはずなのに疲労感がとれない」「夜中に苦しくて目が覚めることがある」「夜中にトイレに行きたくて何度も起きる」などがあります。なお、SASは肥満気味の中年男性に多いというイメージがありますが、やせている人でもかかります。また、子どもや女性がかかることも少なくありません。体型的に気道がふさがれやすい人がかかりやすい特徴があります。

SASと診断する検査はどのようなものですか?

SASの検査には、外来で検査可能な簡易検査法と、入院して行う精密検査法があります。SASの精密検査は、終夜睡眠ポリグラフ(PSG、ピーエスジー)検査(図1)と呼ばれ、1泊入院して行われます。当院では金曜日午後(15時)に来院して頂き、翌朝まで入院していただきます。結果判定に2週間ほどかかり、結果説明は3週間後になることが一般的です。

図1

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検査では、頭や顔、身体などの必要な部位にテープで電極を貼り付け、寝ている間の脳波や呼吸、眼球、筋肉の動きなどを細かく記録します。このため、検査の障害となるもの(かつら、付け爪、整髪料、化粧、ウイッグ、補聴器、マニキュア、髪飾り)などは予め外して頂く必要があります。髭の濃い男性はあらかじめ剃ってきて下さい。映像や音声を記録し、検査担当者が睡眠中の状況を常時監視する場合もあります。装置を装着すると入浴や食事ができにくいため、予めお済ませいただいてから来院していただくことをお勧めしております。検査に異常が生じるため、入院当日の飲酒、カフェイン摂取はお避け下さい。

SASの検査に保険はききますか?

検査には健康保険が適用されます。検査費用に加え入院費やその他諸費用がかかります。3割負担の方の場合、検査費用は約1~3万円程度です。検査入院の費用は、1割負担で約12,000円、3割負担で約33,000円です(個室料金を含む)。精密検査により得られた情報から、睡眠の深さ、呼吸の状態、血液中の酸素の状態などを解析します。その結果をもとに医師が睡眠時無呼吸症候群の診断を行います。

SASの治療方法は?

SASの治療には、持続陽圧呼吸療法(CPAPシーパップ)という装置が用いられます(図2)。CPAPは「Continuous Positive Airway Pressure」の頭文字をとったもので、鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する治療法です。CPAP療法は、欧米や日本国内で最も普及している治療方法です。適切に行うことで、睡眠中の無呼吸やいびきが減少し、熟眠感が得られ目覚めもすっきりします。CPAP治療に必要な費用は、毎月の診察代と機器のレンタル料関係で、おおよそ3割負担で5,000円程度です。医療機関を介して代理店からレンタルします。CPAP治療は、SASが重度の場合や、生活習慣の改善が困難な場合に適しています。CPAP治療をやめると、睡眠時無呼吸による影響のため、高血圧、心臓病、脳卒中が発症する危険が高くなります。また、睡眠の質が悪化するので、昼間の眠気、集中力の低下が再び現れ、運転事故が起きやすくなります。

図2

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CPAPの保険適用を受けるには、定期的な受診が必須となります。担当医の判断により、1~2か月に一度の受診が必要です(自費で購入する場合、購入費が150,000円~400,000円と高額であるほか、海外からの個人輸入が基本になってしまいます)。

睡眠時無呼吸症候群SASの検査は、当院「内科」で対応しています。詳しくは、特定医療法人同心会遠山病院TEL 059-227-6171(代表)に、ご相談下さい。

遠山病院 循環器部長・内科医局長 小西克尚

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